Paladise of delusion

自由気ままな管理人「雨弥斗」が自由気ままに創る妄想とか日々の出来事とか。

デスティーノ・ランコントレ 第二話

ほい、続いちゃいます((((((

 

前回同様お月様視点でお話は続きます↓

 

以下続きを読むより本編です^^

 

 

扉をゆっくり開けると、そこには見慣れた人のうなだれる姿があった。

 

「……久しぶりですね、今日も忙しかったんですか?えらいボロボロに見えますが……」

 

「……モーントぉ……俺もう死神やめたいぃ……」

 

そう言いつつ涙が滴る顔を上げてこっちを見上げてくる。

あぁ……これは3日は休んでいないときの涙の量だ。

 

頭上には鈍く、淡い黄色の光輪。

その左目には三角形を組み合わせた模様。今は疲れているのか普通の目になっていますが。

 

彼の名はデシベル。さっき彼自身が言ったように、彼は死神として世の命を管理する者。

 

死神はこの世に彼一人だけ。しかし命はこの世に無数にあります。

彼は毎日毎日数多の死に逝く命を全て導かなければならず、いつも疲労状態にあるみたいで。僕は世界全体を管理してますがほとんど傍観しているだけなのでその苦労はいまいち実感できません。しかし今目の前でぐったりしている彼を見ているとその過酷さがひしひしと伝わってくるのを感じます。

 

「お、お疲れさま……とにかく入ってください。いつもの紅茶とお菓子、用意してますから」

 

「本当!? わーい、遠慮なくいただくよー! モーントの紅茶がないと俺もう死んじゃうから!」

 

とたんに満面の笑みを浮かべて屋敷に入っていくデシベル

 

「そこまで行きますか……僕の紅茶で元気になれるのならなによりです」

 

その笑顔を見ると、僕も自然と微笑んでしまう。

後を追って屋敷に入る。

 

デシベルは僕の淹れる紅茶が大好物。

彼曰く「一口飲んだら1ヶ月は仕事頑張れる」ほどに大好きなようで。

 

だから彼がやってくるこの日には絶対紅茶を沸かして用意しないといけないのです。

 今日の紅茶も、喜んでもらえるのかな。

 

「お、来た来た。久しぶりーwwwwww」

 

「アーラゥー!!久しぶりー!今日の紅茶おいしい?おいしい?」

 

「ちょ、アーラゥ……僕まだケーキ食べるなって言いましたよね!?」

 

「あ、ごめんwwwwwだってすっげー美味そうだったからさーwwwwwおかわりくれよーwwwww」

 

既に席について、やってきたデシベルと屈託のない笑顔を交わすアーラゥ。

 

……その口元には、白いクリーム。加えてケーキをよそってあるはずの3つのお皿は 、きれいに並べただけの状態になってる。そして「おかわりくれ」の言葉。

 

――言いたいことは山ほどありますがデシベルもいるので何とかこらえることにしよう。

 

「じゃあケーキもとってもおいしいのか!早く食べたい!」

 

「はいはい、じゃあ持ってきますね。あんたはもういっぱい食べたからなしですけどね」

 

 「え、やだ。おかわりよこせー!」

 

わめく太陽はほっといてキッチンに向かう。

 

「ミルクレープはもうないし……。しょうがないからタルトで」

 

ミルクレープは僕がわざわざ人間界に降りて買ったものなのに。

結局あいつに全部食べられてしまったのでしょうがないから僕が料理の本を参考に作ったイチゴのタルトでも出そう。冷蔵庫からタルトを取り出し足早に二人のもとに戻る。

 

「お待たせしました。ミルクレープはどっかの馬鹿が食べてしまったのでタルトです。」

 

「おい、馬鹿ってなんだy」

 

「わーい!おいしそうー!」

 

手早くタルトを切り分けお皿に乗せ、すぐに紅茶をティーカップに注ぎ、それぞれに分配する。

 

「じゃあ食べますか。そして、これからの世界について考えますか」

 

「うん。そうしよう」

 

「だな」

 

 

「「「いただきます」」」

 

デシベルはすぐにティーカップを手に取り一気にぐいっと……

 

「あ、あっつい!!で、でも……お、おいしぃ……俺、もう少しがんばれそうだよ……」

 

……思いっきり舌をやけどしましたね。ものすごく痛そうです。テーブルに突っ伏して震えてますし。

 

「ん、このタルトうめー!!これ何処で買ったの!?」

 

「それ、僕が作ってみたんです。おいしいですか?」

 

「え、お前が作ったn」

 

「何ですかその残念そうな表情は」

 

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なんていうか、意外そうな表情でこちらを見てくるのがうざいです。

 

「暇だったので料理の本を参考に作ってみただけです!てかさっさとやるべきことやっちゃいましょうよ……。デシベル、舌は大丈夫ですか……?」

 

「あー、うん。まだひりひりするけど大丈夫ー。」

 

舌を出して手で扇ぎながら答えるデシベル。真っ赤にただれていて痛々しいですね……。

 

「じゃあさっさと始めましょうか。どうせ今までと変わらないでしょうしね」

 

「いや、今回はそう単純にいかないかもな」

 

「……どういうことですか?」

 

いやに真剣な顔つきでアーラゥが言ったので目配せをするとおもむろに一冊の本をテーブルに置いた。

 

「……アーラゥ、これ何の本?」

 

デシベルがアーラゥに問いかける。

 

「こないだひょっこり見つけたんだ。モーントの図書館にいいかなと思って一回持ってきたんだけどいつの間にか俺のところに戻ってきてたんだ。んで気になって中身を開いたら世界の移り変わりが事細かに書いてあった。おそらくこれもデシベルのもってる絶対運命録(アカシックレコード)のひとつだと思う。モーントに本を並べてくれって言われたときにこれのことを思い出したんだよ」

 

「へぇー!そんなのがあるなんて……。僕の持ってるもの以外にもあったなんてね」

 

「もうひとつの絶対運命録……。」

 

そんなの初耳だ。なぜ今頃こんなものが出てくるのだろう。

 

「ちょっと中身見せてください。気になります」

 

「あぁ、構わないぜ。」

 

そういって彼はおもむろに本を手渡してきたので受け取り、しげしげと眺める。

 

それは赤を基調とした本で、見た目は厚くて重そうだが、手に取るとそんなに重みを感じない。これはデシベルのもっているそれと同じだ。しかし肝心なのは中身である。久々に緊張するのを感じながらゆっくりと本を開く。そこには……

 

「……何も書いていませんけど。」

 

そこにあったのは何も書かれていない白紙のページ。続いて何回かめくってみるが出てくるのは白紙のページばかり。「あ」の一文字すら見えない。

 

こんなものが本当に絶対運命録なのか。という気持ちをこめてアーラゥを見る。

 

「……何も書いてない」

 

覗き込んできたデシベルも残念な表情をしてアーラゥを見る。アーラゥの表情は怪訝なそれに変わっていた。

 

「……は?よく見ろよ。ここにぎっしり書いてあるだろ?」

 

そういって開いてるページの一箇所を指差しながら書いてある内容を読み上げていく。

 

「○○年。異常な日照りが続き、世界各地で凶作が起こる。この凶作により飢饉が相次ぐ」

 

「……それ、でたらめ言ってるんじゃないですか?」

 

どうもアーラゥには見えているっぽい。なぜ僕とデシベルには見えないのだろうか。

 

「でたらめじゃねーよ。今回ばかりは俺ふざけてないし」

 

アーラゥの顔は至って真剣そうに見える。これで嘘をついていたら許しませんけど、こいつがこんな表情で嘘をついたことはないし……

 

しばし考えているとデシベルがおもむろに口を開いた。

 

「もしかして、アーラゥだけにしか見えないようになってるとか?本も赤色だし……。あ、でも俺のは黒色だけど二人にも読めるしなぁ……。なんでだろう?」

 

「それです、きっとこの本の内容はこいつにしか読めないんでしょう。だから僕とデシベルが読もうとしても読めなかったんですね」

 

「じゃあこの本の名前は<太陽の運命録>でよくね?こういうのって名前付けたほうがかっこいいし!!」

 

「……勝手にしてください。となるともしかしたら僕にしか読めない運命録もあるかもしれないってことですよね。探してみますか……」

 

「そっか、太陽があるなら月があってもおかしくないってことか。俺も探すー。」

 

そういっておもむろに立ち上がって本棚に向かう僕とデシベル

 

しかし、この膨大な本の海の中からただ一冊の本を探すとなると……。気が遠くなりそうだ。

 

「どのあたりにあるんだろうなー」

 

近くの本を手にとっては開いて戻しながらデシベルが言う。

 

「運命録なら魔力的なものが備わっててもおかしくないですよね……」

 

 アーラゥの持つ運命録が「太陽」の力を秘めているとするならば……

 

ふわっと空中に浮き上がり全ての本棚が見渡せる位置で止まる。

 

「……。」

 

そのまま静かに目を閉じて、微弱な月の魔力をこの図書館の全体に放つ。これで「月」の魔力を秘めているはずのそれは必ず反応するはずだ。

 

「……ん。見つけた。」

 

図書館の隅っこからかなりの反応が返ってくるのを感じる。すぐに地面に降り立ち反応のある場所に早足で向かう。

 

「モーントー。あったの?」

 

デシベルも後ろからあわててついてくる。

 

「はい、反応があったので。たぶん見つかると思いますよ」

 

そうこうしているうちに目的の場所にたどり着いた。

 

「うへー。こんなに広いんだね……ここ」

 

デシベルはかなりへとへとになっている。これだけ広いと主である僕でさえも心なしか疲れを感じるのだからしょうがないことだろうが。

 

「それだけ本が生まれていってる証拠ですよ。えーっと……これ、ですね」

 

目の前の本棚にずらっと並ぶ本から、反応のあった本をゆっくり取り出す。

 

「表紙も似てるし……これっぽいね」

 

デシベルが表紙を見て頷く。

 

「本物かどうかはあっちで確認することにしましょうか」

 

「そうだね」

 

太陽のそれと同じく、見た目が分厚いが妙に軽い本を大事に抱え、二人でアーラゥの待つテーブルに足を進めた。

 

=続く=

 

~あとがき~

 

前回の投稿から85日後に完成。執筆速度の遅さが身にしみてひりひりしてます。

 

つ、次はもうちょい早めに更新するもの……!

 

しかも。

 

……前回で「二話構成にしました」とか言ってたのにこれ3話構成になってないですか……?

 

あれだ、紅茶とケーキのくだりがかなり長くなってるんだ……。でも書いてて楽しかったんです……!!

 

はい、そしてちょっと物語の核心に踏み込んでみました((((

 

新しく見つかった運命録にはいったいどんな秘密が隠されているのでしょうね←

 

今度こそ次回で完結させる予定ですよ……たぶん。

 

こんな亀更新でも読んでくれる方々に感謝感謝です!!

 

ではでは!次はもっと早くに皆さんに続きを提供できるようにがんばります!